高血圧症とは
血圧が一定の範囲を超えて慢性的に高く維持されている状態です。健康な成人の場合、最高血圧(心臓が収縮して血液を全身に送り出したときの血圧)は130㎜Hg未満、最低血圧(心臓が拡張したときの血圧)は85㎜Hg未満に留まっています。これよりも少し高かったとしても、他の疾患などが見られなかったならば、ほぼ正常だと考えられます。
しかし、最高血圧が140㎜Hg以上、最低血圧が90㎜Hg以上になると、血管の壁にかかる負担が強くなり、様々な健康上の被害が起こりやすくなります。これが高血圧症です。
高血圧に起因する合併症
高血圧症に罹患したとしても、初期の段階では自覚症状が出ません。しかし、その間にも血管には過度の負担がかかり続け、傷ついていきます。血管内が徐々に柔軟性を失って動脈硬化が進行し、次のような合併症の発生リスクが高まっていくのです。
- 脳卒中(脳出血、脳梗塞、くも膜下出血)
- 心臓病(うっ血性心不全、冠状動脈硬化、心肥大、心筋梗塞、狭心症)
- 腎硬化症、腎不全
- 大動脈瘤、閉塞性動脈硬化症
など
治療について
食事療法と運動療法、薬物療法を総合的に行います。食事療法では、塩分摂取量を1日当たり6g未満に減らし、栄養バランスのとれた食事を心がけます。肥満解消、塩分制限による降圧効果は確立されており約4kgの減量で-4.5/-3.2mmHgの降圧効果、また減塩1g/日ごとに収縮期血圧が約1mmHg減少するとメタ解析報告されております。ただ過度の減量、減塩は高齢者等腎機能低下患者様や夏季では脱水など注意が必要です。
さらに、運動療法として、運動制限がなければ、適度な運動をできれば毎日(糖代謝に及ぼす効果は運動後1~2日持続するため2日間以上続けて運動を休むことがないように)行うようにします。激しい運動はかえって血圧を上昇させてしまいますので、適度な負荷の有酸素運動を取り入れましょう。ウォーキングやサイクリングなどが最適です。
食事療法と運動療法だけでは効果が見込めなときは、薬物療法を併用します。症状に合わせ、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)、カルシウム拮抗薬、利尿薬、β遮断薬などを処方します。ACE阻害薬、ARBには食後に減少する骨格筋への血流量を増加させること、キニンの増加がインスリン様作用を示すことからインスリン抵抗性を改善するとともに、糖尿病の新規発症を抑制することが報告されております。血圧コントロールが糖尿病網膜症や腎症など細小血管症の発症・進展を抑制することが報告(UKPDS38)されております。