子宮頸がんなどの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)感染症を防ぐワクチンの定期接種について、自治体から接種対象の女性へ予診票などを送る積極的勧奨が、2022年4月から約9年ぶりに再開されました。
定期接種の対象者への個別通知など、積極的勧奨を中止していた期間(2013年6月~2022年3月)に接種機会を逃してしまった人へのキャッチアップ接種は、2022年4月から3年間、無料で実施されます。未接種の方は、是非ご検討下さい。
■ヒトパピローマウイルス(HPV)とは?
ヒトパピローマウイルス(HPV)は、性経験のある女性であれば50%以上が生涯で一度は感染するとされている一般的なウイルスです。
子宮頸がんを始め、肛門がん、膣がんなどのがんや尖圭コンジローマ等多くの病気の発生に関わっています。
近年、特に若い女性の「子宮頸がん」罹患が増えています。一生のうちに「子宮頸がん」にかかる人は1万人あたり132人、学校で例えるなら35人クラスであれば、2クラスに1人と言われています。
■子宮頸がんの推移
上記の通り、子宮頸がんは年間約1万人が罹患し、約2,800人が死亡しており、患者数・死亡者数とも近年漸増傾向にあります。
特に、他の年齢層に比較して50歳未満の若い世代での罹患の増加が問題となっています。
(公益社団法人 日本産科婦人科学会より参照)
■子宮頸がんを予防するには
「子宮頸がん」の95%以上は、ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスの感染が原因と言われています。
子宮頸部に感染するHPVの感染経路は、性的接触と考えられます。HPVはごくありふれたウイルスで、性交渉の経験がある女性のうち50%~80%は、HPVに感染していると推計され、性交渉を経験する年頃になれば、男女を問わず、多くの人々がHPVに感染します。
そして、そのうち一部の女性が将来高度前がん病変や子宮頸がんを発症することになります。
HPVに感染してから子宮頸がんに進行するまでの期間は、数年~数十年と考えられます。
発がん性HPVの中で、 ‘HPV16型’、 ‘HPV18’型は特に前がん病変や子宮頸がんへ進行する頻度が高く、スピードも速いと言われています。
しかし、 ‘HPV16型’、 ‘HPV18’型の感染は、 「ヒトパピローマウイルス感染症(HPV)予防ワクチン」によって防ぐことができます。
子宮頸がんを予防するために、現在小学校6年~高校1年相当の女子を対象に、定期接種が行われています。
■定期予防接種対象者(公費)
12歳になる日の属する年度の初日から16歳になる日の属する年度の末日までの間にある女子の方。
(小学校6年生から高校1年生の年齢に相当する女子)が対象です。
予防接種を受ける際に必要な予診票は、小学校6年生から高校1年生の年齢に相当する女子に対して令和4年7月中にご自宅へ送付を予定しています。(大田区)
日本においては、積極的勧奨の差し控え以降、接種数が低い状態が続いており、2019年では3回接種率が1.9%でした。しかしこの2~3年の間に、徐々に接種数が増加してきています。
2018 年に厚生労働省は、HPV ワクチンの接種を検討あるいは実際に接種をうけるお子様・保護者向けのリーフレットを作成し、積極的な接種を呼び掛けています。↓
(https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou28/index.html)
どんなワクチンであっても,ワクチンにはベネフィット(有効性)とリスク(有害事象)の両者がありますが、HPVワクチンが国際的に広く推奨されているのは、ベネフィットがリスクをはるかに上回るという科学的根拠に基づいているからです。
国内においても複数のHPVワクチンの有効性についての研究が進行中です。
新潟県で行われている研究では、ワクチンを接種した20歳~22歳の女性においてHPV-16型・18型(HPVワクチンによる効果が期待される型)に感染している割合が有意に低下していることがすでに示されています。 (公益社団法人 日本産科婦人科学会より参照)
■子宮頸がん予防(ヒトパピローマウイルス感染症)ワクチンの有効性
HPVワクチン接種を国のプログラムとして早期に取り入れたオーストラリア・イギリス・米国・北欧などの国々は、HPV感染や前がん病変の発生が有意に低下していることが報告されています。これらの国々では、ワクチン接種世代と同じ世代でワクチンを接種していない人のHPV感染も低下しています。(集団免疫効果といいます)
またフィンランドの報告によると、HPVに関連して発生する浸潤がんが、ワクチンを接種した人達においては全く発生していないとされています。
HPVワクチンと子宮頸がん検診が最も成功している国の一つであるオーストラリアでは2028年に世界に先駆けて新規の子宮頸がん患者はほぼいなくなるとのシミュレーションがなされました。世界全体でもHPVワクチンと検診を適切に組み合わせることで、今世紀中の排除が可能であるとのシミュレーションがなされています。
■子宮頸がん予防(ヒトパピローマウイルス感染症)ワクチンの種類
国内で承認されているHPVワクチンには2価、4価、9価の3種類があります。
いずれも一定期間に計3回接種することが望ましいとされています。
●2価ワクチン(サーバリックス)は子宮頸がんの主な原因となるHPV-16型と18型に対するワクチンです。(公費)
●4価ワクチン(ガーダシル)はHPV-16型・18型と、良性の尖形コンジローマの原因となる6型・11型の4つの型に対 するワクチンです。(公費)
●9価HPVワクチン(シルガード9)は、さらに5つの型(31/33/45/52/58型)が予防対象になります。(自費)
これらワクチンはHPVの感染を予防するもので、すでにHPVに感染している細胞からHPVを排除する効果は認められません。したがって、初めての性交渉を経験する前に接種することが最も効果的です。
当院では、 4価ガーダシル(公費)を取り扱っております。
また自費ではありますが、9価も接種可能です。(1回税込み35,000円)
9価HPVワクチンは、日本では2020年7月21日に厚生労働省より製造販売が承認され、2021年2月より販売されていますが、現在はまだ定期接種ではなく、9歳以上の女性のみの任意接種となっています。予約して頂ければ、接種可能です。
大田区による4 価ヒトパピローマウイルスワクチン説明書も宜しければご覧ください ↓
現在日本において公費で受けられるHPVワクチンは2種類、2価と4価があります。
中学1年生までに初回接種をはじめ、間隔をあけて、同じワクチンを合計3回接種します。
当院取り扱いの4価ガーダシルにおいては、初回から2カ月後に2回目、初回より6か月後に3回目を接種します。ご予約が必要ですので、お電話、もしくは受付にてお申し付けください。
原則として、新型コロナワクチンとそれ以外のワクチンは、同時に接種できません。
互いに、片方のワクチンを受けてから2週間後に接種できます。
HPVワクチン接種後には、 多くの方に、接種部位の痛みや腫れ、赤みなどが起こることがあります。
まれですが、重い症状(重いアレルギー症状、神経系の症状)が起こることがあります。
しかし、 HPVワクチン接種によって短期的な局所反応(接種部位の反応)は増加するものの、全身的な事象や重篤な副反応は増加しないと報告されています。世界保健機関(WHO)も世界中の最新データを継続的に評価し、HPVワクチンの推奨を変更しなければならないような安全性の問題は見つかっていないと発表しています。
因果関係があるかどうかわからないものや、接種後短期間で回復した症状をふくめて、 HPVワクチン接種後に生じた症状として報告があったのは、接種1万人あたり、約10人です。 このうち、報告した医師や企業が重 篤と判断した人は接種1万人あたり、約6人です。
■HPVワクチンの接種を逃した方のための接種(キャッチアップ接種)に関する情報
平成9年度生まれ~平成17年度生まれ(誕生日が1997年4月2日~2006年4月1日)の女性の中に、通常のヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの定期接種の対象年齢(小学校6年から高校1年相当)の間に接種を逃した方がいらっしゃいます。
まだ接種を受けていない方に、あらためて、HPVワクチンの接種の機会をご提供しています。
次の方が対象です。※任意接種を含めて過去に3回接種済みの方は対象外です。
(1)平成9年4月2日から平成18年4月1日までに生まれた女子
(2)平成18年4月2日から平成19年4月1日までに生まれた女子(令和5,6年度のみ対象)
(3)平成19年4月2日から平成20年4月1日までに生まれた女子(令和6年度のみ対象)
予防接種を受ける際に必要な予診票は、対象(1)の方に対して令和4年8月中にご自宅へ送付予定しています。対象(2)及び(3)の方については定期接種対象者として送付する予診票を使用する方向で検討しています。(大田区)
■償還払い(接種費用の助成)について
接種勧奨差し控えにより定期接種の機会を逃した平成9年4月2日から平成17年4月1日までに生まれた女子であって、定期接種の対象年齢を過ぎて自費で任意接種を受けた方がいらっしゃいます。
こうした方に対する当該任意接種の費用助成について準備を進めております(8月中に開始予定)。
詳細については決まり次第、大田区役所のHPでご案内します。↓
https://www.city.ota.tokyo.jp/seikatsu/hoken/yobou_sessyu/kodomo/shikyukeigan230701.html
接種記録が確認できる書類(母子健康手帳「予防接種の記録」欄の写し、予防接種済証等)、接種費用の支払を証明する書類(領収書及び明細書、支払証明書等)はお手元に保管していただくようお願いいたします。
■定期予防接種対象者
12歳になる日の属する年度の初日から16歳になる日の属する年度の末日までの間にある女子の方。
(小学校6年生から高校1年生の年齢に相当する女子)が対象です。
予防接種を受ける際に必要な予診票は、小学校6年生から高校1年生の年齢に相当する女子に対して令和4年7月中にご自宅へ送付を予定しています。(大田区)
■子宮頸がん予防(ヒトパピローマウイルス感染症)ワクチンと検診
ワクチン接種だけですべての子宮頸がんが防げるわけではありません。性交渉の経験がある人は、必ず子宮がん検診を受けることが大切です。
検診受診率は、欧米では約80%ですが、日本では約40%とたいへん低いのが現状です。
HPV感染症による子宮頸がん予防で最も重要なことは、定期接種の年代の人は必ずワクチンを受けることと、性交渉経験のある人は、20歳を過ぎたらワクチン接種の有無にかかわらず子宮がん検診をしっかりと受けることです。
HPV感染は男女間で感染を繰り返すため、男女にワクチン接種をすることで感染の広がりを抑えることができます。男性のワクチン接種の目的は、男性本人のHPV感染による病気を予防することです。
HPVは、男性もかかる病気(中咽頭がん、肛門がん、尖圭コンジローマなど)の原因になります。
実際に男子へのワクチン接種は多くの国で推奨され、アメリカ、イギリス、オーストラリアなど20か国以上の国で公費接種が行われています。
日本では、2020年12月から任意接種で男性が4価ワクチンを受けられるようになりました。
当院では1回16,000円税込みで接種が可能です。
接種年齢については、女性と同様、性交渉を行う前の段階で接種することが望ましく、12-13歳頃が最も適した年齢といわれています。
しかしHPVワクチンの知名度は低いことから、この年齢の男児に接種を行うことはなかなか難しいです。男性では尖圭コンジローマを発症していなければ、26歳くらいまでの接種が推奨されます。
Q1 性交渉の経験がある人に接種可能か?
初めての性交より前にHPVワクチン接種することが最も効果的ですが、性交渉の経験があっても、HPVワクチンに含まれるHPV型に未感染であれば、その未感染のHPV型の将来の感染予防が期待できるため、接種は可能です。
すでに感染しているHPV型に対する治療効果はないのため、既感染者を含む集団ではHPV16型/18型に関連した前がん病変の発生予防効果は約30~60%とされています。(日本産婦人科学会より)
Q2 年齢により効果に差はあるのか?
HPVワクチンに対する免疫応答は年齢とともに減少しますが、HPVワクチンに含まれるHPV型に未感染の場合、そのHPV型による疾患に対し、45歳までの有効性が認められています。
Q3 過去に接種したがどうか不明な場合にはどうすればよいですか?
現時点(2022年4月)では、国内における指針やガイドラインはありません。母子手帳などで可能な限り、接収記録を確認下さい。
Q4 過去に接種を中断してしまった人は、これから3回接種しないと効果は期待できないか?
接種スケジュールが長期中断された場合でも、最初からやり直すのではなく、残りの接種を追加して下さい。
・1回のみ接種の方:2回目の接種を早急に行い、3回目接種は2回目接種から少なくとも3カ月間隔を置いて接種して下さい。
・2回接種の方:3回目の接種をできるだけ早急に行ってください。
海外臨床試験の結果では、2回目や3回目の接種が遅れた場合でも、抗体反応は良好で、通常のスケジュールに劣らなかったことが示されています。
Q5 過去に定期接種で1~2回接種した人は、残りの接種回数をキャッチアップで接収可能か?
接種が中断された方も、1回目2回目接種した後の接種間隔にかかわらず、キャッチアップ対象者となります。初回からやり直すことなく、残りの回数の接種を行ってください。
Q6 過去に接種したワクチンが不明な場合どうしたらよいですか?
過去に接種したHPVワクチンの種類が不明である場合、キャッチアップ接種を実施する医療機関の医師と被接種者とで十分に相談したうえで、接種するHPVワクチンの種類を選択してください。この場合、結果として、異なる種類のHPVワクチンが摂取される可能性があるため、ワクチンの相互性に関する安全性や免疫原性及び有効性についても説明を受けて下さい。
Q7 妊娠している可能性がある場合、接種しても問題ないですか?
妊婦または妊娠している可能性のある女性は、予防接種上の有益性が危険を上回ると判断される場合のみ接種します。また、3回接種を完了する前に妊娠が判明した場合は、残りの接種を妊娠終了まで延期して下さい。
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子宮頸がん予防(ヒトパピローマウイルス感染症)ワクチンについて、ご相談がございましたら、スタッフまでお気軽にお声かけ下さい。
接種希望の方は、スケジュールの確認もございますので、お電話、来院にてご予約をお願い致します。
☏03-3721-5222
原則として、新型コロナワクチンとそれ以外のワクチンは、同時に接種できません。互いに、片方のワクチンを受けてから2週間後に接種できます。
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