— 心の不調が“暴力”という形で表れることも。医学的視点とエビデンスから考える —
2024年4月8日深夜、女優・広末涼子さんが病院で看護師に暴力をふるったとして逮捕されるという報道がありました。
この件について、当院・竹内内科小児科医院の院長・五藤良将(医療法人社団五良会・理事長)(内科医ごっち)が、Yahoo!ニュース(FLASH)にて医師としてコメントをいたしました。

🔗 掲載記事:
広末涼子、看護師に“蹴り”入れて逮捕「暴れだす患者はいる」医師が危惧する点とは
■ 病院で突然暴れ出す患者…実は医療現場では“ありうる”こと
病院内で暴力的な言動を取る患者さんは、必ずしも稀ではありません。
その背景には、医学的にさまざまな原因が考えられます:
- アルコールや薬物の使用(中毒・離脱)
- 抗不安薬・睡眠薬の逆説的反応(paradoxical reaction)
- 急性の精神疾患(パニック障害、躁病など)
- せん妄(delirium)
こうした状態は、患者本人が意図的に起こしているわけではなく、脳と神経の一時的な異常反応によって引き起こされる行動であることが多いのです。
■ 海外の医学研究でも示されている「せん妄」や「薬物関連行動」の実態
米国精神医学会誌『Journal of Clinical Psychiatry』の報告では、急性せん妄(Acute Delirium)や薬物誘発性の行動変容が、医療スタッフへの暴力行為と関係することが示されています。
Reference:
Grover S, Avasthi A. Delirium and violence: a review. J Clin Psychiatry. 2006;67(4):692-701.
PMID: 16669724
「せん妄はしばしば暴力、錯乱、幻覚、焦燥と結びつく急性状態であり、特に薬物やアルコールが関与している場合、病院での予測不可能な行動の一因となる」と記されています。
また、benzodiazepine(ベンゾジアゼピン系薬物)などの抗不安薬・睡眠薬では、稀に以下のような副作用が報告されています:
- 興奮(agitation)
- 攻撃性(aggression)
- 反社会的行動(impulse control disorders)
Reference:
Lader M. Limitations on the use of benzodiazepines in anxiety and insomnia: are they justified? Eur Neuropsychopharmacol. 1999;9 Suppl 6:S399-405.
PMID: 10628674
■ 「奇行」ではなく、「心の病のサイン」としてとらえることが大切です
今回の件においても、「一時的にパニック状態になった」とされていることから、心の健康状態に異常をきたしていた可能性があります。
社会全体で「心の病」や「脳の一時的混乱(せん妄)」に対する正しい理解を深めることが重要です。
■ 当院では「心療内科」も診療しています
竹内内科小児科医院では、内科・小児科に加え、心療内科(メンタルヘルス)も診療しています。
- 不眠、不安、動悸、息苦しさ
- パニック障害や気分の波
- お薬の影響で不安や混乱が出ている方
- ご家族の問題で悩んでいる方 など
心の不調は「誰にでも起こりうるもの」です。
自分を責めることなく、どうぞお気軽にご相談ください。
竹内内科小児科医院(東京都大田区田園調布)
内科・小児科・皮膚科・糖尿病内科・アレルギー科・心療内科・訪問診療往診
🖋 院長:五藤 良将(日本内科学会認定医/医療法人社団五良会 理事長)
