<五藤院長が医療記事の取材・監修を受けました>
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■キャリア官僚が性的暴行で逮捕…多発するレイプドラッグ、薬の出どころは医療現場?
2月19日、32歳の経済産業省キャリア官僚が準強制性交未遂で逮捕された。20代知人女性に睡眠作用がある薬物を飲ませ、性的暴行をしようとした準強制性交未遂の疑いである。
この数年、薬物を使用した性的暴行事件は増加しており、各都道府県警察も注意を呼びかけている。レイプドラッグの被害に遭った女性のなかには、ショックと不安から被害届を出せずにいるケースもあり、検挙された事件は氷山の一角と思われる。
レイプドラッグに使用される薬の多くは「向精神薬」であり、病院を受診し、処方箋を発行されなければ入手することができない薬である。レイプドラッグによる犯罪を防ぐためには、検挙はもちろんであるが、向精神薬の不正流通を防ぐことも重要だろう。しかし、医療現場における向精神薬の管理には、不正流通を許す“抜け道”が存在する。
■在庫管理のずさんな薬局
2022年の7月に報道されたレイプドラッグによる性犯罪では、神奈川県で当時31歳の薬剤師の男が同僚の女性と食事をした帰り、女性がトイレに行った隙に薬を飲み物に入れ、抵抗不能の状態にさせて、女性にわいせつな行為をしたとして逮捕されている。その後の警察の調べで、容疑者の自宅から数種類の睡眠薬がおよそ400錠発見されている。
睡眠薬の多くは向精神薬に分類され、その管理や取り扱いの方法は「麻薬及び向精神薬取締法」によって厳しく定められている。そのため薬局では、処方数と在庫数にズレが生じないよう厳しく管理するほか、患者が向精神薬の残薬(飲み残し)を多く持たないよう、服薬指導の際には、患者に十分なヒアリングを行い、薬の服用状況を把握する努力を行っている。
また、薬剤師であっても、勤務する薬局で処方箋なしに薬を購入することはできない。しかしながら、なかには管理がずさんな薬局があることも否定できない。薬剤師である容疑者が薬局から向精神薬を手に入れていたかは定かではないが、薬局での薬の管理体制をより厳しくすることが、薬剤師や薬局勤務者からの薬の不正流通を防ぐことにつながるだろう。
■法の抜け道
向精神薬については、「麻薬及び向精神薬取締法」によって取り扱いが規定されており、投薬期間の上限を薬によって14日、30日、90日と定めている。レイプドラッグに使用されるような睡眠作用がある向精神薬の場合、30日に制限されているものが多い。一般に、そういった向精神薬は、1回に30日を超えた処方はできない。その制限を無視して30日以上の処方を行えば、「返戻」といって健康保険の使用が認められず、医療機関に保険からの支払いが行われなくなるため、その制限は厳守されている。
しかし、その制限は「保険診療の場合」であり、「自由診療」であれば制限を超えて処方することができてしまう。
竹内内科小児科医院院長の五藤良将医師は、こういった現状が、少なからず犯罪に加担する可能性があると指摘する。
「保険診療で睡眠薬などの向精神薬を処方する際には日数制限などの縛りはありますが、自由診療で向精神薬を処方する際は特別な制限や縛りがないのが現状です。だからといって、大量に処方するのは医師としてのモラルがないと思います。
記憶に新しいところでは、新宿区歌舞伎町の精神科クリニックを開業していた院長が患者に個人的に処方してあげる代わりに性的関係を持ったり、薬でコントロールし奴隷にしたり、傷害の容疑などで逮捕された事件がありました。しかし、大量の向精神薬の処方自体は、何のお咎めもなかったようです。ただ、医師という立場を悪用していた許されない行為だと思います」
レイプドラッグは、医療現場で不正に入手し、悪用、転売されているケースが多い。国が介入し、その実態を明らかにし、規制すべきである。現状では、メチルフェニデートなどの一部の薬は流通制限がある薬はあるものの、一般的な睡眠薬の流通制限は難しいかもしれない。
また、医療が卑劣な犯罪の片棒を担ぐことがないよう、医師は向精神薬の処方にはもっと慎重になるべきだろう。
(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト:外部執筆者)
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