メトホルミンは、ヨーロッパで何世紀ものあいだ薬草として使われてきたフレンチ・ライラックという植物由来の分子です。効果と安全性がとても高いお薬として、「世界保健機関(WHO)必須医薬品モデルリスト」にも掲載されており、全世界的に2型糖尿病治療の第一選択薬になっています。
【World Health Organization model list of essential medicines: 21st list 2019】
WHOの必須医薬品リスト及び必須診断薬リストは、各国の医療システムに妥当な価格で広く使用されるべき製品の優先順位を考慮する際のコアとなるガイダンスです。公表されたこれらのリストはがんおよびグローバルな健康課題に焦点を当てたもので、患者に対する有効な治療、優先順位と最適な使用を強調しています。WHOの必須医薬品リストは世界150カ国以上で使用されています。
メトホルミンは、糖尿病患者さんに広く処方されているお薬ですが、健康寿命を延ばす効果が示されたことから、現在多くの臨床研究が進められています。
話題となったきっかけは、『LIFE SPAN -老いなき世界-』という書籍です。著者のデビット・A・シンクレアは、老化の原因と若返り研究の世界的第一人者で、ハーバード大学で教授を務め、「世界で最も影響力のある100人」にも選出された研究者です。
現在アメリカでは、3,000人を対象とした「メトホルミンによる老化の標的化(TAME)」という大規模研究が進んでおり、老化の治療薬としてメトホルミンを認可させようという動きがあります。メトホルミンにはエイジングケアとしての力があると感じます。また、メトホルミンには、ほかの糖尿病治療薬と異なり体重増加副作用がなく体重減少効果もあると言いわれることもあり、ダイエット薬としてメトホルミンを処方している美容クリニックもあるようです。体重減少の程度は各研究結果によって様々ですが、おおよそ3~6か月で1~6kg程度でややマイルドです。
【メトホルミンの分子構造】
【メトホルミンの作用機序】
Metformin, a first-line treatment for type 2 diabetes, acts primarily by reducing hepatic glucose production and improving insulin sensitivity in the liver, muscle, and adipose tissues. This results in lower fasting and postprandial blood glucose levels.
The mechanism by which metformin achieves these effects is multifaceted and still not completely understood, but it’s believed to act in part by inhibiting mitochondrial complex 1 of the respiratory chain, which leads to an increase in the AMP/ATP ratio. This in turn activates AMP-activated protein kinase (AMPK), an important cellular energy sensor and regulator.
When activated, AMPK stimulates catabolic pathways (those that break down molecules and produce ATP) like glycolysis, beta-oxidation, and autophagy. At the same time, it inhibits anabolic pathways (those that build up molecules and consume ATP) such as gluconeogenesis, lipid synthesis, protein synthesis, and cell growth.
This “energy switch” to a state of low energy can lead to several downstream effects, such as reduced glucose production in the liver (which helps lower blood glucose levels), increased glucose uptake in the muscles, and reduced insulin resistance, among others.
Overall, the effect of metformin is to improve insulin sensitivity and reduce glucose production, helping to regulate blood glucose levels in individuals with type 2 diabetes. It’s worth noting that metformin’s effects are not just limited to its actions on metabolism; recent research also suggests it may have anti-inflammatory and anti-cancer properties.
■ 肝臓では、糖新生抑制、脂肪酸合成抑制、β酸化促進、糖分解促進、オートファジー促進。
(肝細胞cAMP産生減少により肝臓グルカゴン作用拮抗)(肝ミトコンドリアーグリセロールリン酸シャトルを非競合阻害によりNADH/NAD+比の上昇、肝糖新生抑制)(acetyl-CoA catabolyase 1の抑制し、ミトコンドリア内の脂肪酸濃度低下させインスリン抵抗性改善)
→→血糖代謝改善。
■ 筋肉では、GLUT4の細胞膜へのトランスロケーション促進し糖取込促進。
→血糖代謝改善。運動効果も改善。
■ 腸管からの糖吸収抑制。
→血糖改善。
■ 抗炎症効果、抗動脈硬化効果、抗がん効果。
→メトホルミンにがん予防の効果があるという研究も多数報告されています。糖尿病患者はがんの発症リスクが高いことが知られています。インスリンおよびインスリン様成長因子が一部のがんを促進し、また2型糖尿病患者は診断される前に血液中のインスリンレベルが高い状態が何年も続いていることが多いことが原因と考えられています。一方、メトホルミンはインスリン産生量を増大させないため、がんの成長を増やさないことが考えられます。また、がん抑制遺伝子を活性化する作用があり、血管にダメージを与える活性酸素が増えるのを防ぐ抗酸化作用もあると考えられています。
→メトホルミンに、高齢者のオートファジーやミトコンドリア機能を向上しTh17関連のinflammaging【(加齢に伴う慢性炎症)(高齢者ではオートファジーや酸化還元バランスに関与するミトコンドリア機能の低下に伴い、CD4+T細胞からのTh17関連サイトカインの産生が増加される)】を改善することが報告されています。
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