γ-GT(γ-glutamyltransferase)とは?(γ-GTPと違うのか?)

γ-GT(γ-glutamyltransferase)とは?肝機能検査の重要指標

はじめに

肝臓の健康状態を評価する際に重要な指標となる酵素の一つがγ-GT(γ-glutamyltransferase)です。本記事では、γ-GTの役割、検査の重要性、名称変更の理由、結果の解釈について詳しく解説します。当院(竹内内科小児科医院)では、最新の超音波検査装置「Versana Balance(ベルサナ バランス)」を導入し、常勤の臨床検査技師もいます。

γ-GTとは?

γ-GT(γ-glutamyltransferase)は、主に肝臓、腎臓、膵臓に存在する酵素です。この酵素は、体内のアミノ酸代謝やグルタチオン代謝に関与し、特に肝臓の機能評価に重要です。以前はγ-GTP(γ-glutamyl transpeptidase)と呼ばれていましたが、現在は酵素の正確な機能を反映するためにγ-GTと呼ばれています。

なぜγ-GTPと呼ばなくなったのでしょうか?

γ-GTP(γ-glutamyl transpeptidase)からγ-GT(γ-glutamyltransferase)への名称変更には、いくつかの理由があります。

正確な機能の反映

「γ-glutamyltransferase(γ-GT)」は、酵素の主な機能である「γ-グルタミル基を転移する」反応をより正確に表しています。一方、「γ-glutamyl transpeptidase(γ-GTP)」は「ペプチドを切断する」酵素のように誤解される可能性があります。

統一性の向上

医学や生化学の分野では、酵素や化合物の命名を国際的に統一する動きがあります。国際的な命名規則(IUBMB Enzyme Nomenclature)に従って、酵素の名称を統一することで、研究や臨床の場での混乱を防ぎ、情報の一貫性を保つことができます。

教育と研究の便宜

統一された名称を使用することで、医学教育や研究において、学生や研究者が酵素の機能や役割を理解しやすくなります。これにより、教育の質が向上し、研究成果の共有がスムーズになります。

γ-GT検査の意義

γ-GTは、以下のような状況でその値が上昇します。

  1. 肝臓疾患: 肝炎、肝硬変、脂肪肝など。
  2. 胆道障害: 胆石症、胆管炎など。
  3. アルコール摂取: 長期的なアルコール摂取によりγ-GT値が上昇します。

このため、γ-GT値を測定することにより、肝臓や胆道の健康状態を評価し、早期に疾患を発見することができます。

【補足】アルコール摂取がγ-GT(γ-グルタミルトランスフェラーゼ)の値を上昇させる理由には以下の要因が関与しています。

  1. 肝臓への影響:
    • 長期にわたるアルコール摂取は肝臓に負担をかけ、肝臓の細胞が損傷を受けます。この結果、肝細胞からγ-GTが放出され、血中のγ-GT濃度が上昇します。γ-GTは肝臓の健康状態を示す指標の一つであり、アルコール依存症やアルコール関連肝疾患の診断に使用されます。
  2. 酸化ストレスの増加:
    • アルコールは体内で代謝される過程で酸化ストレスを引き起こします。この酸化ストレスがγ-GTの産生を刺激し、結果として血中γ-GT値が上昇します。γ-GTは酸化ストレスの早期マーカーとしても知られています。
  3. 腸管の影響:
    • 慢性的なアルコール摂取により、腸の粘膜におけるγ-GTの活性が増加することが報告されています。この腸管からのγ-GTが血流に入り、血中γ-GT濃度が上昇します。これは、アルコール依存症の患者において腸管のγ-GT活性が高まるためと考えられています。

結論として、アルコール摂取によるγ-GTの上昇は肝臓への直接的な影響、酸化ストレスの増加、そして腸管からのγ-GTの放出など複数のメカニズムによって引き起こされます。


γ-GT値の正常範囲と異常値

γ-GTの正常範囲は、年齢や性別によって異なりますが、一般的には以下の通りです。

  • 男性: 10〜50 IU/L
  • 女性: 7〜32 IU/L

異常値としては、以下のような状況が考えられます。

  • 軽度上昇: 肝臓への軽い負担や薬物の影響。
  • 中等度上昇: 慢性肝炎や肝硬変の初期。
  • 高度上昇: 重篤な肝障害や胆道閉塞。

γ-GT値の管理方法

γ-GT値が高い場合、以下の対策が推奨されます。

  1. 生活習慣の改善: アルコール摂取を控え、バランスの取れた食事を心がける。
  2. 定期的な検査: 定期的にγ-GT値を測定し、変化をフォローアップ、経過観察する。
  3. 医師の指導: ウルソなど内服したり専門医受診したりと適切な治療を行う。
    ウルソ(UDCA)は、肝酵素レベル(ALT、AST、γ-GT)を有意に低下させる効果が報告されています。例えば、ある二重盲検無作為化試験では、3ヶ月間のUDCA投与により、γ-GT値が平均50%減少し、ALT値も30%減少したとされています。
    Bellentani, S., et al. (1989). Effect of ursodeoxycholic acid treatment on alanine aminotransferase and gamma-glutamyltranspeptidase serum levels in patients with hypertransaminasemia. Results from a double-blind controlled trial.. Journal of hepatology, 8 1, 7-12 .

当院の取り組み

当院(竹内内科小児科医院)では、肝臓や胆道の健康状態を包括的に評価するために、γ-GT検査に加えて腹部エコー検査も積極的に行っています。特に、GEヘルスケア・ジャパン株式会社の「Versana Balance(ベルサナ バランス)」という最新の超音波検査装置を使用しており、高精度な診断を可能にしています。さらに、常勤の臨床検査技師が在籍しており、専門的な検査と迅速な診断を提供しています。

まとめ

γ-GTは、肝臓や胆道の健康状態を評価するための重要な指標です。定期的な検査と適切な生活習慣の維持により、肝機能の健全性を保つことができます。当院では、γ-GT検査と腹部エコー検査を組み合わせて、包括的な健康管理をサポートしています。肝臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれ、症状が現れる前に問題を発見することが重要です。日頃から健康管理に努め、異常を感じたら早めに医師の診察を受けましょう。

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Author: 五藤 良将